制御盤のインバータは「ノイズ対策」がなぜ必要なのか?

電気の知識

インバータはモーター制御に欠かせない装置ですが、実は「ノイズの発生源」でもあります。

このインバータノイズというのが曲者でして、適切に対策しないと制御盤に設置された機器が正常に動作しません。

私もノイズのせいでセンサー誤作動や設備機械の誤動作を経験しました。

本記事では、インバータのノイズの仕組みやフィルタの重要性、実際の対策方法を初心者にもわかりやすく解説します。

この記事をきっかけに、ノイズ対策についての理解を深めましょう!

そもそもインバータとは?

引用:インバータ | 製品・ソリューション | 安川電機

インバータは、交流電源の周波数や電圧を変換してモーターの回転数を自在に制御できる装置です。

モーターの回転数を制御することで、省エネ効果や効率的な運転を実現できるため、現代の制御盤に欠かせない存在といえます。

ビルの空調設備や、工場の加工機械・搬送機械の制御盤など、幅広い分野で使われている便利な装置です。

しかし、便利なインバータには弱点があります。それは「ノイズを発生させる装置」だという点です。

インバータは半導体スイッチング素子を高速でON/OFFさせるため、電流や電圧の急激な変化を繰り返します。そのため、インバータはその動作過程でさまざまな電気的ノイズが発生します。

このノイズは、制御盤の中の他の機器や、周囲の電子機器に影響を与える可能性があります。

インバータで発生するノイズの種類

インバータが原因で発生するノイズには、大きく分けて3つの種類があります。

以下で、それぞれについて詳しく説明していきます。

1.伝導ノイズ

電源ラインや信号線を通じて伝わってくるノイズです。

特に電源ラインに混入すると、同じ電源を使う他の機器にも影響を与えるため、システム全体の安定性を損ないます。

アース線からノイズが侵入するケースもあります。

2.放射ノイズ

電磁波として空間に放出されるノイズです。

インバータの入力と出力に繋がれた電線がアンテナとなり、ノイズが周囲の機器へと伝わります。

無線通信に干渉することもあり、工場の中で無線LANやBluetoothを使用する際に問題となることがあります。

3.誘導ノイズ

インバータによってノイズが流れている入力や出力側の電線に周辺機器の電源線や信号線が近づくことでノイズがその機器に伝わります。

これは電磁誘導や静電誘導によりノイズが誘導され伝わっています。

ノイズによって起こる影響

もしノイズ対策をせずにインバータを使用すると、以下のようなリスクがあります。

設備停止や誤作動

センサーやPLCの誤動作によって、装置全体が予期せず停止する可能性があります。

ノイズによって意図しない入力信号がPLCに入力されてしまいます。

通信エラーやデータ欠損

制御盤内や工場内で使用する通信ラインにノイズが干渉すると、データ伝送が不安定になり、生産ラインに影響が出ます。

特に最近は、設備を無線接続で管理している工場も多いです。

インバータノイズはその通信を妨げる原因になります。

規格不適合

出荷検査でノイズの基準を満たさない場合、納入できず大きな損失になることもあります。

インバータのノイズ「対策方法」

インバータから発生するノイズに対して、対応策が無いわけではありません。

以下に、有効な対策について紹介します。

電源ラインにフィルタを設置する

もっとも基本的かつ有効な対策です。

インバータの入力側にノイズフィルタを入れることで、電源ラインを通じたノイズの拡散を防げます。

動力回路にノイズが入ると、全ての機器に影響があるので必須レベルで実施したい対策です。

シールドケーブルやツイスト線を使う

モータのケーブルや制御回路の線にはシールド付きケーブルを使用し、ノイズが入り込みにくい回路を作ります。

ツイストペア線も効果的です。

接地(アース)を正しく行う

インバータやフィルタは必ずアースに接続します。

しかし、アースの取り方が不適切だと逆効果になることもあります。規格やマニュアルに従った施工が必要です。

信号線と電力線を離して配線する

動力線と信号線を同じ回路としてに配線すると、ノイズが飛び込みやすくなります。

リレーなどを利用して、動力回路と制御回路は切り離すことで、ノイズの干渉を減らすことができます。

ノイズフィルタでノイズ対策をしよう

インバータノイズに対して、ノイズフィルタで対策することは非常に有効な手段です。

以下に、ノイズが有効である理由をまとめます。

  1. 伝導ノイズを遮断するため
    ノイズフィルタは電源ラインを通じて流れる高周波成分を吸収し、他の機器に影響を与えないようにします。
  2. 他機器への影響を防ぐため
    センサーやPLCなど、微弱な信号を扱う機器はノイズに非常に弱いです。フィルタがあることで、誤作動のリスクを減らせます。
  3. 規格・法令対応のため
    工場設備ではEMC指令や各種規格に適合する必要がある場合があります。フィルタを使用することで規格値をクリアし、検査や出荷トラブルを回避できます。

【実例】私が体験したインバータのノイズトラブル

私が制御設計の仕事を始めて間もないころ、インバータを使った装置でセンサーが誤作動するというトラブルに直面しました。

原因を突き止めるのに苦労しましたが、最終的には「ノイズ対策が不十分だった」ことが判明しました。

特に印象に残っているのは、PLCの入力信号が突然乱れたケースです。
制御盤の中でセンサーがONになっていないのに、PLCが勝手にON信号を受け取ってしまうという現象が発生しました。

調査の結果、インバータから発生した伝導ノイズが信号線に入り込み、PLCに誤信号を与えていたのです。

このとき上司から教わったのが「フィルタを入れていなかったからだ」という事実でした。

私自身、当初は「インバータをつなげば動く」と思い込んでいたのですが、実際にはノイズ対策を考慮しなければ安定した制御システムにはならないと痛感しました。


まとめ:インバータにはフィルタが必須

インバータは便利な装置である一方、必ずノイズを発生させるという特性を持っています。そのため、ノイズフィルタを設置しないと誤作動や設備停止といったトラブルにつながる可能性が高いです。

私自身、新人のころに「なぜインバータにはフィルタが必要なのか」を理解できず、大きな失敗を経験しました。その経験を通して、インバータとフィルタはセットで考えるべきだと学びました。

これから制御設計に携わる初心者の方は、ぜひ「インバータ=ノイズ発生源」「フィルタ=安定稼働の必須アイテム」という意識を持って設計や保守に臨んでください。

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