電気を扱っていると「漏電」という言葉を耳にすることのあると思います。
漏電はショートと並んで、電気の安全を考える上でとても大事なキーワードです。
工場設備においても漏電には気をつけなければなりません。制御盤など電気機器が集中する箇所においては、特に注意が必要です。
制御盤は工場設備の心臓部ともいえる重要機器です。
もし漏電が発生すれば、設備停止による生産遅延や安全事故のリスクが高まります。
本記事では、そもそも漏電とは何かから、制御盤で漏電が起きた場合の症状・影響・防止策を解説します。
そもそも漏電とは?
漏電とは、「電気が本来通るべき配線や機器から外に漏れてしまう現象 」のことをいいます。
電気は通常、電線の中を通って機器に供給されます。しかし、絶縁が壊れたり湿気が原因で、電気が壁や機器の金属部分、大地(アース)に流れてしまうことがあるのです。
漏電によって起こりうる現象を以下で紹介します。
1. 感電

漏電が起きた機器の金属部分に触れると、人の体を通って電気が大地へ流れます。これが 感電事故 です。
場合によっては命に関わることもあり、特に水まわりでは危険度が高まります。
2. 火災の原因

漏電した部分が熱を持ち、周囲の可燃物に引火すると 漏電火災 になります。
「コンセント周りが焦げていた」という事例は漏電が関わっていることが多いです。
3. 機器の故障

漏電は機器内部で異常な電流が流れる原因となり、故障や寿命の短縮につながります。
異常電流が部品に過度な負荷をかけることで、絶縁劣化や部品の損傷を招き、機器の動作不良を引き起こすことがあります。
さらに、漏電が繰り返されると機器の経年劣化が早まり、想定より早く故障する場合があります。
制御盤で漏電が発生するとどうなる?

制御盤で漏電が発生すると、漏電遮断器によって安全のため設備全体が自動的に停止することがあります。
これは従業員の感電や火災を防ぐために必要な措置ではありますが、生産ラインの停止は大きな経済的損失につながります。
たとえば以下のような損失が挙げられます。
- 生産スケジュールの遅延
- 納期の遅れによる信用低下
- 復旧コスト
- 機械稼働率の低下
特に、機械稼働率の低下は致命的です。
工場の生産設備というのは設備投資ですから、より多く製品を製造して投資金を回収する必要があります。
しかし、工場設備というのは何億円という金額になる事も珍しくないため、投資金を回収するのには長い時間を要します。
事業者であれば、機械の稼働率を上げたいと思うのは当然のことです。
そのため、工場設備にとって制御盤の漏電による機械停止は無視できないリスクと言えます。
制御盤における漏電の原因
では、制御盤での漏電はなぜ起きてしまうのでしょうか?
代表的な原因を紹介していきます。
1. 絶縁の劣化
長年使った電気製品や配線は、ゴムや樹脂でできた被覆(絶縁体)が劣化してひび割れや破損が生じます。
経年劣化による被膜の亀裂は、導線から電気が漏れ出る原因になりえます。
2. 湿気や水分
湿気や水分も漏電の原因となります。
特に、ミストを使う工場など、湿気の多い過酷な場所では、配線や機器の内部に水分が入り込み、電気が逃げて漏電することがあります。
3. ホコリやゴミ
ホコリやゴミも漏電の原因になります。
長年使っていると制御盤にホコリや汚れが溜まってくると思います。このホコリに湿気が加わると、電気がホコリを伝って漏れる「トラッキング現象」が発生します。
これも制御盤から漏電が発生する要因の一種です。
4. 配線や施工ミス
電気工事での誤配線によっても漏電が発生することがあります。
回路中の端子が端子台以外のところに触れていれば漏電に繋がります。
制御盤で漏電が起きたときの症状

漏電は目に見えないため、気づきにくいのが特徴です。
しかし、以下のようなサインがある場合は要注意です。
- 制御盤の 漏電遮断器(漏電ブレーカー)の漏電表示が点灯する
- 電気機器を扱うときにビリッと軽く感電したことがある
- 配線や端子台に 焦げ跡や焦げ臭いにおい がある。
- 機械の消費電力が急に増えた(漏電で無駄に電気が流れている可能性あり)
こうした症状があれば、漏電している可能性が高いです。すぐに漏電しているかを確認しましょう。
制御盤で漏電を防ぐための対策
制御盤での漏電は、機器の故障や事故につながることがあります。
ここでは、制御盤を安全に使うための簡単で実践しやすい対策について紹介します。
1. 定期的な点検
ケーブル、電気機器、端子台は、定期的に状態を確認しましょう。被覆の破れや焦げ跡があり劣化の激しいものは使用を中止してください。
新しいものに取り替えることで事前に事故を防ぐことが可能です。
2. 水や湿気を避ける
制御盤を水回りに設置する際は十分に注意が必要です。水分、湿気の多い過酷な環境で使用する場合は必ず防水仕様の器具を使いましょう。
使用する部品は、IP54以上の防水性能にする対策などが有効です。
3. 端子台周りは清潔に
電気は接続部にホコリやゴミがたまると、トラッキング現象を起こします。
特に端子台など、目に見えない接続部周りも掃除しておくと安心です。
4. 漏電遮断器を設置する
漏電の危険性がある回路には 漏電遮断器 を設置するのが基本です。
漏電遮断器は微小な漏電を検知してすぐに電気を遮断してくれます。
感電や火災のリスクを大幅に減らすことが可能であり、経済的被害を最小限に食い止めることが可能です。
5. 異常があれば専門家へ
もし「漏電かな?」と思ったら、自分で制御盤をいじらずに電気工事士など専門業者に相談することをおすすめします。
漏電の原因を突き止めるのは非常に困難です。メーカーや資格者に任せるのが手っ取り早く解決するケースも多いです。
まとめ

漏電は「電気が漏れてしまう現象」で、感電事故や火災など重大なトラブルの原因になります。
特に工場設備においては、制御盤の故障による生産停止は致命傷です。
以下のことに注意して、事前に漏電を防ぐことが大切です
- 原因:絶縁劣化、水分、ホコリ、施工不良など
- 危険性:感電・火災・機器の故障
- 対策:点検・清掃・防水・漏電遮断器の設置
ショートと違い、漏電は目に見えにくいため、気づかないうちに危険が進行していることもあります。だからこそ、日頃の点検や漏電遮断器による保護がとても大切です。
電気は便利で生活に欠かせない存在ですが、正しく使わないと命に関わる事故を招きます。
ぜひ今回の記事を参考に、身の回りの電気環境をチェックしてみてください。